上流工程と下流工程、どっちが向く?SEを3年やって書けないままの私が「正直、上流に行けば済む話ではなかった」と思うこと
設計書やコードの前で、手が止まる。自分は下流工程に向いていない気がする。上流工程に行けば、書かなくて済むんだろうか。
答えから書きます。上流工程と下流工程のどっちが向くかは、工程の名前では決まりません。書くのが苦しいのか、人と話して決めるのが苦しいのか。分かれ目はそこです。
私はSEを3年やって、書けないままでした。その側から、公式の資料を読んだ結果を渡します。
目次
【結論】上流と下流の線は、公式の資料でもそろっていない
job tagの3ページに「上流」「下流」は0回
厚生労働省の職業情報サイトjob tagで、システムエンジニア(受託開発)、プログラマー、ITコンサルタントの3ページを開きました。2026年10月9日のことです。
ページの中を検索した結果は、「上流」も「下流」も3ページとも0回。出てきません。
載っているのは工程の名前のほうです。SEのページでは、要件定義から設計、テスト、納品したあとの保守・管理までが、まとめてSEの仕事になっています。
IPAの本では、コードを書くのは「中流」
言葉の説明が見つかったのは、IPA(情報処理推進機構)の本でした。2008年の「ITプロジェクトの『見える化』中流工程編」で、工程を3つに分けています。
| 呼び名 | IPAの本の説明 |
|---|---|
| 上流工程 | 経営者も含めた要件定義とシステム設計 |
| 中流工程 | ソフトウェア設計→プログラミング→単体テスト |
| 下流工程 | 結合・総合テストから、構築・稼働まで |
コードを書くところは、下流ではなく中流。知りませんでした。
ただ、本にも「ここでいう」と断りがあります。この本の中での分け方で、どこでも通じる決まりではないです。
同じIPAの「共通フレーム2013の概説」も読みました。こちらは企画と要件定義を「超上流」と呼んでいます。「上流工程」「下流工程」という言い方は、文字で検索できた範囲では0回でした。
どこからが下流かは、資料で違う。だから求人票に「上流工程」と書いてあっても、指している範囲は会社ごとに違うと考えておくほうが安全です。
年収の数字は、工程では分かれていない
年収をjob tagで見ると、SE(受託開発)が578.5万円、ITコンサルタントが889万円です。
プログラマーはSEと同じ数字でした。なぜ同じなのかは「システムエンジニアとプログラマーの違いは?」で読んでいます。
工程ごとの年収は、3ページのどこにもありません。公式の数字で言えるのは職種の差までです。労働時間と並べた表は「SEとITコンサルの違いは?」に置きました。
書くのが苦しいのか、人と決めるのが苦しいのか
名前があてにならないなら、作業で分けます。
job tagのSEのページは、要件定義を「ITについての技術力とコミュニケーション能力によって顧客とよく検討していく」仕事だと説明しています。
プログラマーのページには「顧客に直接接することは少ない」とありました。
前のほうの工程は、人と話して決める。まんなかは、書いて動かす。ざっくり、そういう違いです。
自分がどちらで苦しいのかは、こう確かめます。先週の仕事で、終わったあとぐったりした作業を3つ書く。その横に「書く・読む」か「人と決める」かを付けます。
- 「書く・読む」が多い人:コードやエラーがつらい側です。前のほうの工程を見てみる価値はあります。ただ、SEという名前でも書く仕事は残ります
- 「人と決める」が多い人:前の工程に行くと、その作業が仕事のまんなかに来ます。急いで上を目指さなくていい人です
- 両方に付く人:工程より先に、会社や現場のほうを疑います
正直に言うと、「人と決める」側の苦しさは、私の体験としては書けません。私が書けるのは、もう片方だけです。
私は「書けない」側。移った先も、また開発だった
私は文系で、ITの知識がないまま大手の会社にSEとして入りました。
小さいものなら分かります。でも業務のソースコードになると、どこがどうなっているのか追えなくなる。エラーが出ても、原因がどこにあるのか見当がつきませんでした。
3年たって、なんとなく読めるようにはなりました。それでも自分では書けません。最後はエラーやコードを見るだけで拒絶反応が出て、辞めると決めています。
さっきの分け方なら、はっきり「書く・読む」の側です。すごく苦手で、しんどかった。
そのあとコンサルに移りました。
コンサルでは、どのプロジェクトにも入っていない待機の期間(アベイラブル)が半年ありました。その話は「コンサルのアベイラブルとは?」に書いています。
半年たって決まったのは、ITの運用と開発のプロジェクト。大手の外資系コンサルが受けた仕事を、さらに受ける二次受けでした。
決まったときの気持ちは2つです。決まってほっとした。それと、また開発か。両方でした。
コンサルという名前でも、実態は開発や運用がほとんどの会社があります。これは私の考えです。
今の私なら、上流か下流かを職種や会社の名前では選ばず、入るプロジェクトで自分が何の作業をするのかを、決める前に聞きます。
SEの3年は、そこで役に立ちました。エンジニアとしての勘所が使えたし、エンジニアの人たちの会話も少し分かる。業務や仕様の理解も早くなりました。
一方で、コンサルで求められるのは論理的思考と要領の良さ、ハードワーク、それに主体性です。求められる能力は高く、周りの人の能力も高い。楽な場所ではないです。
今日、紙1枚でやること
- ぐったりした作業を3つ書いて、「書く・読む」「人と決める」を付ける
- 今の自分の仕事を、IPAの表の3行のどこかに置いてみる
- 気になる求人票に「上流工程」とあったら、仕事内容の欄でどの作業のことかを確かめる。書いていなければ、面接で聞くことのメモに足す
上流工程と下流工程の質問に、分かる範囲で答えます
上流工程はきつい?
人と話して決めるのが苦しい人には、きつい工程です。要件定義の段階で顧客と認識にずれがあると満足できるシステムができない、とjob tagも説明しています。私自身は、上流の仕事で苦しんだ話を持っていません。
上流工程はつまらない?
人によります。ITコンサルタントのページ(job tag)では、よく使う道具が文書作成・表計算・プレゼン資料のソフトでした。作って動かすのが好きな人には、物足りないはずです。
上流工程と下流工程で、年収は違う?
工程ごとの年収は、job tagの3ページには載っていません。職種ではSEが578.5万円、ITコンサルタントが889万円。ただ、統計データの欄に「必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」と注記があります。目安です。
私ならこうする
私がいま「上流工程と下流工程、どっち」で迷っているなら、工程の名前はいったん横に置きます。
ぐったりする作業が「書く」なのか「人と決める」なのかを先に見る。そのうえで、求人票と面接で作業の中身を聞きます。
転職や異動を決めるときは、会社の説明や公式の情報でも確かめてください。
上流に行けば片づく、とは私には書けません。私は移った先でも結局SEの仕事をしていて、今も仕事ができないままです。できる側からではなく、同じ側から書いています。
あなたが先週いちばんぐったりしたのは、書く作業でしたか。人と決める作業でしたか。
出典(すべて2026年10月9日に確認):
- 厚生労働省job tagシステムエンジニア(受託開発)(仕事の説明。年収は令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工したもの)
- 厚生労働省job tagプログラマー(同上)
- 厚生労働省job tag ITコンサルタント(同上)
- IPA ITプロジェクトの「見える化」中流工程編(2008年。「はじめに」の上流工程・中流工程・下流工程の説明)
- IPA共通フレーム2013の概説(「超上流」と呼ぶ企画・要件定義のプロセスの説明)