SIerとSESの違いは「会社の種類」と「契約の呼び名」。請負・準委任・派遣を国の資料で1枚の表にした
求人票に「SIer」とある会社と「SES」とある会社。どっちも客先で働くと聞く。何が違うのか分からないまま、応募のボタンの前で止まっていませんか。
分からなくて普通です。この2つ、そもそも比べている物が違います。SIerは会社の種類で、SESは契約のしかたの呼び名。だから「SIerでSES」という働き方もありえます。
違いが出るのは契約のほうです。請負・準委任・派遣の3つで、誰があなたに指示を出すかと、何に対してお金が払われるかが変わります。国の資料と法律の条文を読んで、表にしました。
目次
SIerとSESは、同じものさしで比べられない【結論】
SIerは「開発を引き受ける会社」
厚生労働省の職業情報サイトjob tagは、受託開発のSEの勤務先を「SIer(システムベンダー)、コンピュータメーカーなど」と書いています。仕事は「顧客の情報システムの開発を受託し、ソフトウェアを開発する」こと。
つまりSIerは、システムを作る仕事を丸ごと引き受ける会社のことです。
SESは、法律にも国の基準にも出てこない
SESの公式な定義を探しました。見つかりません。
厚生労働省の37号告示、その疑義応答集(第3集)、「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」。3つとも文字で検索しましたが、「SES」は1回も出てきませんでした。業界の呼び名なんですね。
世の中の解説では、準委任契約でエンジニアが客先に入って作業する形をSESと呼ぶことが多いです。なので、ここから先は法律にある3つの契約で話を進めます。
請負・準委任・派遣を、1枚の表にする
| 契約 | 指示を出すのは | お金が払われるのは |
|---|---|---|
| 請負 | 自分の会社 | 仕事の結果(完成したもの) |
| 準委任 | 自分の会社 | 引き受けた作業をすること |
| 派遣 | 客先(派遣先) | 客先の指示を受けて働くこと |
もとにしたのは、民法632条(請負)、643条・648条・656条(委任と準委任)、労働者派遣法2条です。派遣の行の右はしは条文にそのままの言葉がなく、2条の定義から私がまとめました。
請負は、完成したものにお金が出る
民法632条はこうです。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
何時間かかったかではなく、できあがったか。そこが約束です。
準委任は、作業そのものにお金が出る
準委任は「法律行為でない事務の委託」(民法656条)。条文に「完成」という言葉はありません。頼まれた作業をすること自体が、約束の中身です。
「SIerは請負、SESは準委任」と説明している記事が多いです。ただ、疑義応答集には、アジャイル型の開発では契約が「準委任契約となる場合があります」とも書いてあります。請負か準委任かは、会社の種類では決まらないんですね。
派遣だけ、客先が指示を出せる
労働者派遣法2条は、派遣を「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と決めています。3つのうち、客先の人が直接あなたに指示していいのは派遣だけです。
もうひとつ違うのが、許可です。派遣の事業をするには厚生労働大臣の許可が要ります(同法5条)。
SESと派遣の違いは、ここで見分ける
席は客先、周りは客先の人。見た目は同じです。違うのは表のまんなかの列だけ。
準委任なら、指示を出すのは自分の会社のはずです。疑義応答集は、してはいけない例をかなり具体的に挙げています。客先の人が、受注した側の担当者に直接こうすること。
- 仕事の割り付け、順序、緩急の調整を指示する
- 業務の遂行方法や労働時間について指示する
- 特定の人を指名して働かせる、特定の人の就業を拒否する
一方で、会議に全員が出ること、技術的な助言や提案をし合うことは、それだけで問題になるわけではない、とも書いてあります。スキルシートも、個人を特定できず、指名や拒否に使えないものなら、出しただけで直ちに偽装請負とは判断されない、という答えでした。
線引きは細かいです。自分の現場がどちらに当たるかは、私には判断できません。契約がどれなのか分からない、おかしい気がする、というときは、都道府県の労働局など公的な窓口に聞いてください。指示がおかしいと感じたときに先に確かめることは「客先常駐を辞めたいとき」にまとめました。
名前と中身がずれる話は、コンサルにもある
私は大手の会社でSEを3年やって、コンサルに移りました。
SEのころは、業務のソースコードになると迷子になり、エラーもどこを見ればいいのか分かりませんでした。今の私が1年目の自分に言うなら「ミクロとマクロの両方から見ろ」です。コードがミクロなら、契約はマクロの側にあります。自分がどんな約束のもとで働いているのか。上の表1枚ぶんでいいので、知っておいて損はない、と今は思います。
移った先のコンサルでも、似たずれがあります。「コンサル」と名乗っていても、中身は開発や運用がほとんどの会社がある。会社を選ばないと、ただの派遣会社のような働き方にもなりえます。
会社選びでも同じだと思うんです。SIerかSESかの看板より、契約と、実際にだれが指示しているか。確かめるのはそっちです。
契約より、働き方そのものを変えたい人へ
ここまで読んで「どの契約でも、客先を回るのがもうしんどい」と感じた人もいるはずです。その場合の行き先のひとつが社内SE。自分の会社のシステムを、自分の会社の人と見る仕事です。席が少ないことや、きつい所は「社内SEへの転職は難しい?」に書きました。
求人を見てみたい人向けに、社内SEに絞った転職サービスを1つ置きます。「社内SE転職ナビ」は、運営会社の発表では2016年に始まり、転職相談の実績は5万名を超えています。私は使っていないので、使い心地は書けません。
このブログが紹介して報酬を受け取る条件では、エンジニア未経験の人と45歳以上の人、エンジニア以外の職種の人は対象外です。これからITに入る人には、この広告はすすめません。その人は、応募先の契約がどれかを面接で聞くことのほうが先です。
作る仕事を続けたい人にも要りません。合う現場にいるなら、看板がどちらでも続ける理由は十分あります。
今日のうちにやれる2つ
- 自分の会社(か、応募したい会社)に「私の現場の契約は、請負・準委任・派遣のどれですか」と聞く。メールだと記録が残ります
- 厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で会社名を検索する。派遣の許可を持つ事業所かどうかが分かります
SIerとSESの違いで、聞かれそうな質問
SIerとSES、どっちがいい?
契約の名前だけでは決まりません。私なら、会社の種類より「入る現場をどう決めるか」「指示はだれが出すか」を面接で聞きます。
SESは違法なの?
SESという呼び名の働き方が、それだけで違法になるわけではありません。準委任の契約なのに、客先が直接指揮命令をしている実態があると、疑義応答集は「契約の形式を問わず」労働者派遣事業に当たると書いています。自分の場合がどうかは、労働局に聞くのが確かです。
SESと派遣の違いを、ひとことで言うと?
指示を出す人です。派遣は客先が指示を出せます。そのかわり許可制で、派遣元と派遣先がそれぞれ何に責任を持つかは、厚生労働省のガイドに表で載っています。準委任のSESでは、指示を出すのは自分の会社の側です。
私ならこうする
私が今SIerかSESかで迷っているなら、会社の種類で選ぶのをやめます。面接で聞くのは2つ。現場の契約は3つのうちどれか、現場で私に指示を出すのはだれか。はっきり答えてくれる会社なら、看板がどちらでも候補に残します。
もう働いている人は、まず1通、契約の種類を聞くメールを。
あなたに毎日の指示を出しているのは、自分の会社の人ですか。それとも、客先の人ですか。
出典:
- 厚生労働省 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)(2026年10月5日に確認)
- 厚生労働省37号告示に関する疑義応答集(第3集)(同上)
- 厚生労働省 労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド(同上)
- e-Gov法令検索 民法(632条・643条・648条・656条。同上)
- e-Gov法令検索 労働者派遣法(2条・5条。同上)
- 厚生労働省job tagシステムエンジニア(受託開発)(同上)
- 厚生労働省 人材サービス総合サイト(労働者派遣事業の許可・届出事業所の一覧。同上)
- アイムファクトリー 社内SE転職ナビ プレスリリース(2026年4月)(2026年10月5日に確認)