SEの将来性はAIでどうなる?SEを3年で辞めた私の答えは「正直、分からない」。国とIPAの資料で、言えることと言えないことを分けた
しんどい思いをして覚えているのに、この先AIが全部やるなら、続ける意味ってあるのか。検索の窓に「SE将来性AI」と打つとき、頭にあるのはたぶんこれです。
先に答えます。SEの将来性がAIでどうなるかを言い切った公式の資料は、私が探した範囲にはありませんでした。
確かめられたのは2つだけ。DXを進める人材が足りないと答える企業が今も85.5%あることと、開発の現場でAIがもう使われていることです。
3年でSEを辞めた私が、国とIPAの資料を開いて、言えることと言えないことを分けました。
目次
【結論】SEの将来性とAI、公式の資料で言えるのはここまで
「79万人不足」は2019年の試算。幅は16万〜79万人
「2030年にIT人材が最大79万人不足」。将来性の話でよく見る数字です。出どころは、経済産業省の委託で2019年3月にまとめられた報告書でした。7年前です。生成AIという言葉は1回も出てきません。
しかも79万人は、いちばん上の数字です。報告書の表から、2030年に足りなくなる人数を写します。
| IT需要の伸び | 生産性が年0.7%上がる | 年2.4%上がる |
|---|---|---|
| 低位(年1%) | 16.4万人 | 7.2万人余る |
| 中位(年2〜5%) | 44.9万人 | 16.1万人 |
| 高位(年3〜9%) | 78.7万人 | 43.8万人 |
右上を見てください。余る、です。生産性が年2.4%上がって需要の伸びが小さければそうなる、という行まで同じ表に入っています。前提を1つ動かすだけで、答えが不足から余りまで動く試算なんです。
同じ報告書に「従来型の人材は余る」もある
この報告書は、IT人材を2つに分けた試算もしています。AIやビッグデータなどを担う「先端IT人材」と、昔からある需要を担う「従来型IT人材」です。
需要の伸びが低位で、生産性が年0.7%上がる場合。2030年に先端は38.4万人足りず、従来型は22.0万人余る、という結果でした。
ただ、これにも前提があります。従来型から先端へ移る人は年1%だけ。そう置いたときの数字です。移る人がもっと多いと置き直すと、従来型も5.7万人足りない側に回ります。
足りないのか、余るのか。7年前の時点で、答えは人材の種類によって割れていました。自分がどちらに入るのかは、報告書を読んでも決まりません。
2026年の調査でも不足感は強い。ただ、少しゆるんだ
新しい数字もあります。IPAの「DX動向2026」は、2026年4〜6月に企業へ聞いて1,799社が答えた調査です。
DXを進める人材の量が「やや不足」「大幅に不足」と答えた企業は、合わせて85.5%。ただ「大幅に不足」だけなら50.1%で、2回前の調査の62.1%から下がっています。
注意がひとつ。DXに取り組む企業に、DXを進める人材のことを聞いた数字なので、SEだけの話ではありません。
開発の現場で、AIはもう使われている
同じ調査に、AIを何に使っているかの問いがあります。
AIを入れている企業と、試している・検討している企業に聞いたもので、「プログラムコードやシステム開発支援」を選んだ割合は情報通信業で76.3%。ほかの業種を大きく上回っていました。
厚生労働省のjob tagも読みました。SE(受託開発)のページに、生成AIという言葉は出てきません。出てくるのは、となりのプログラマーのページ。生成AIが作るプログラムは「年々、質が良いものになっており」とあります。
そのあとに続くのは、プログラマーがシステム全体の開発を担当するようになったり、特定の分野の専門性で活躍したりしている、という話。なくなるとは書いていません。なくならないとも書いていません。
ここから先は、誰にも分からない話です。何年後にSEの人数がどうなるかを生成AIまで織りこんで試算した公式の資料を、私は見つけられませんでした。
書く力は残らなかった。私に残ったのは、業務と仕様が分かること
私は文系で、ITの知識が無いまま大手の会社にSEとして入りました。3年やって、コードはなんとなく読めるようになった。でも自分では書けない。エラーやコードを見ると拒絶反応が出るようになって、辞めました。
コンサルに移ってITのプロジェクトに入ったとき、役に立ったのは別のところです。エンジニアとしての勘所。エンジニアの人たちの会話が少し分かること。業務や仕様をのみこむのが早くなったこと。
3年かけても、書く力そのものは身につきませんでした。残ったのは、業務と仕様が分かるほう。これが私の場合です。
job tagのSEのページにも、顧客が自覚していない課題まで拾って何を作るか決める、という仕事が入っています。コードの手前です。
AIがコードをどこまで肩代わりするのか。そこは私には分かりません。ただ、SE 1年目の自分には、考えすぎないで楽観的に分析していい、と言います。
細かいところと全体の両方から見て、ロジカルに考える。AIのニュース1本は、細かいほうです。上の表や調査が、全体のほう。
しんどい作業の分け方は「SEに向いてないと思ったときの3つの分け方」に書きました。コードから資料へ道具が変わる話は「SEとITコンサルの違いは?」にあります。
AIを理由に、今日決めなくていい人
不安になるのは、先のことをちゃんと考えているからです。次の人は、AIを理由に今日決めなくていい。
- 辞めたい理由が、AIの話より前からある人。残業、給料、コードが合わない。それはAIと切り離して考えられます。理由の分け方は「SEを辞めたい」に書きました
- ニュースで不安になっただけで、自分の仕事はまだ何も減っていない人
- 入って1〜2年で、仕事の全体がまだ見えていない人
逆に「SEを続ければ安心」とも、私は言いません。言える材料が無いからです。
今日、10分でできること
- job tagのSEのページで「どんな仕事?」を読む。要件定義、設計、テスト、保守。今の自分がやっている作業に印をつける
- 経済産業省の報告書の17ページ(PDFの21枚目)を開く。79万人のとなりの数字を、自分の目で見る
- AIと仕事の記事を読んだら、いつの調査か、誰に聞いたのかだけ確かめる
AIとSEの将来性、検索されている質問に答える
SEの仕事はAIでなくなる?
分かりません。なくなると書いた公式の資料も、なくならないと書いた公式の資料も、私は見つけていません。
確かめられたのは、開発支援にAIを使う企業が情報通信業に多いことと、DXを進める人材が足りないと答える企業が85.5%あることまでです。
SEとプログラマー、AIの影響が大きいのはどっち?
生成AIに触れているのは、job tagではプログラマーのページだけでした。ハローワークの有効求人倍率(令和7年度)は、SE(受託開発)が2.54、プログラマーが0.98です。ただ、この差がAIのせいかどうかは、数字からは分かりません。
AIで仕事がなくなるのは、いつから?
時期を示した国の資料は、SEについては見つかりませんでした。経済産業省の試算は2030年までですが、2019年のものです。生成AIを前提にした国の試算は、まだ見つけていません。
私ならこうする
今の私がSEでAIが不安なら、将来を当てにいくのはやめます。当てられないので。
代わりに先週の作業を書き出して、コードを書いた時間と、業務や仕様を理解した時間に分けます。私に残ったのは、分かるほうだけでした。自分がどちらに時間を使っているかが見えれば、AIの話はいったん横に置けます。
仕事を変える判断は、会社の説明や公式の情報でも確かめてください。
あなたの先週は、書く時間と分かる時間、どちらが長かったですか。
出典(すべて2026年10月7日に確認):
- 経済産業省委託事業IT人材需給に関する調査 調査報告書(2019年3月、みずほ情報総研。17ページ 表3-5、48ページ 表3-14)
- IPA「DX動向2026」(2026年7月30日公開。本文PDFの33ページ、54ページ、67ページ)
- 厚生労働省job tagシステムエンジニア(受託開発)(有効求人倍率は令和7年度)
- 厚生労働省job tagプログラマー(同上)